母が、珍しく朝のドラマを見始めた。 父が亡くなる少し前に、 ：朝ドラを見なくなったら、朝の庭仕事がゆっくりできていいなあ。 と、言ったのをきっかけに、 朝のドラマを見なくなった母。 大ヒットした「あまちゃん」も知らず、 大好きな向井さんも、 大河…

近所にあった劇場が、いつの間にか取り壊されていた。 趣のある建物で、 義父の介護をしていたころは、 散歩の途中、よく劇場前のベンチで休憩したものだ。 建物の壁面に取り付けられた彫刻も、 すばらしいものだと思っていたら、 偶然立ち寄った美術館でレ…

ゴールデンウィークに孫から食事に誘われた母。 １週間前から店を予約し、 財布の中身も確認して、準備万端のはずだった。 しかし、直前になって、あったはずのお金が無いと言い出した。 ：この前見たときには、ちゃんとあったのに。 そう言って訝る母だが、…

先日、健康診断に行った母。 ずっと気になっていたことを医師に相談した。 ：夜もぐっすり眠っているのに、 毎日、眠くて眠くて仕方ないんです。 すると、医師は笑って答えた。 ：年をとるとみんな眠くなるんですよ。 病院から帰ってきた母は、 ：考えてみれ…

父が生きていた頃は、 毎年、誕生日には、父がお小遣いをくれた。 きちんと熨斗袋に入れて、 表には墨で名前も書かれていた。 父から最後に貰った熨斗袋は、 今も保管している。 父が亡くなってからは、母が代わりに、 ：これは、お父さんからよ。 と言って…

使いこなしていたビデオデッキを大分前に新しいものに買い換えて、 一度は覚えたビデオデッキの使い方を 最近になって、忘れてしまった母。 昔の機械と違って、最近の機械は、 スイッチを入れてもすぐには動かない。 複雑な処理が出来る代わりに、 昔のビデ…

最近の母は、ゲームで遊ぶことすら億劫なようで、 ＤＳを手にすることもなくなってしまった。 以前は、姉の帰りを待つのに、 ゲーム機が手放せないと話していたのだが、 最近は、待っていてもすぐに眠くなって、 夕方には、布団に入って寝てしまうそうだ。 …

このところ、夕方になると伯母が母の所に電話してくる。 〇〇ちゃんが帰ってこないの それは、２０年以上前に亡くなった伯父の名前である。 初めの頃は、母も、 ：もう、随分前に亡くなったのよ。 と、教えていたのだが、 毎日なので、近頃は、 ：うちも帰っ…

今年のお正月も、母の家に親族が集まった。 大晦日と元日に、２日間続けて宴会だったので、 正月の２日は、家で静かにしていたら、 ：誰も来なくて寂しいわ。 と、母から電話があったので、 駅ビルで寿司を買って、母の家に遊びに行った。 母と昼ごはんを食…

母は、手袋をしない。 凍えるような寒さでも、手袋はしない。 手袋をしなくなったのには理由がある。 結婚して初めて迎えるお正月。 年越しの準備にと、 銀行へ振り込まれた父のボーナスを下ろしに行って、 帰り道、通帳とお金の入った手提げを落としてしま…

お土産に買って行ったお菓子の袋に、 ハロウィンのカボチャのマスコットが付いていたのを 母が見つけて、珍しく、 ：かわいいねえ。 と、目を細めた。 母が、ハロウィンの飾りを目にするようになったのは、 ごく最近のことだ。 私が、子供の頃には、まだ、そ…

母の家に伯母が遊びに来た日のこと。 事前の電話では、 ：借りた服をクリーニングに出したいから、一緒に行って。 と言う話だったのだが、 伯母が、持ってきた服を見たら、 洗濯してアイロンもかけてあったので、 クリーニングに行く必要は無いのではという…

母と靴を買いに行った。 長年愛用してきたサンダルが壊れて、 同じようなのが欲しいと言っていた母。 しかし、同じサンダルは売っておらず、 似た様なものを買ったのだが、 どうもしっくりこないと言うので、 私が履いているようなスニーカーを勧めたら、 ：…

先日、８３歳の誕生日を迎えた母。 だいぶ耳も遠くなり、 とんちんかんなやり取りは増えたが、 元気に過ごしている。 下の姉の家族の食事の世話を 定年を迎えた姉の夫がするようになった途端、 自分の食事を作ることが面倒になったと言って、 有り合わせのも…

母は、この季節でも使い捨てのカイロを愛用している。 腰が冷えると痛みだすといって、 真夏でも使い捨てのカイロを腰に貼っている。 しかし、毎年、この時期にカイロを置いている店が、近所に無く、 私が、探して届けることになる。 安価なうちにと、冬のう…

テレビの録画のやり方がわからなくなったと、母から電話があった。 ：久しぶりに秋川さんが出るのに、録画の予約ができないの。 予定ではなかったが、母の家に様子を見に行った。 テレビとＤＶＤデッキの電源を入れて、 番組表から録画予約をする方法を母に…

母の日に、旅行で留守にするというので、 出発の前日に、母の家を訪ねた。 プレゼントしたのは、好物の水ナスの漬物である。 ：これ、美味しいんだよね。 母は、晩のおかずにするからと冷蔵庫に仕舞った。 我が家では、母の日にカーネーションを買ったことが…

母の家の風呂釜が壊れた。 家を建てた当時からの風呂釜で、 故障した時も同じものを取り寄せて交換して、 使い続けてきたものだ。 今回も、母はそのつもりで、 特別に取り寄せないと在庫が無いという、 その旧式な風呂釜を十数万かけて修理した。 工事が始ま…

夫が存命中は、誕生日を家族で過ごしたものだが、 今年は、自分で自分の誕生日ケーキを買って、 母の家に持って行き、 半ば強制的に、母に祝ってもらうことにした。 ：あら、可愛いケーキねえ。 と、母は目を細めたが、 私の誕生日とは気付いてない様子だっ…

桜が咲き始めた町を母と歩いた。 少し足をのばせば、 桜の名所といわれる公園もあるが、 ：混んでいるから嫌だわ と言う母。 ：住宅街にも立派な桜の木がたくさんあるから、 そんな所に行かなくてもお花見できるわよ。 そう話す通り、 住宅街には、桜の古木…

母の所に、姉が晩御飯を届けるようになって数ヶ月。 ：若い人は変わったものを作るね。 どれも美味しいよ。 と、私には姉の料理を褒める母だが、 姉には、 ：味が濃かった。 とか、 ：これは好きじゃない。 とか、文句ばかり言っているらしい。 しかも、持っ…

母は、物を失くすことが増えた。 約束をしても、忘れてしまう。 もう、できないからと、 お金の管理を子供たちに任せた。 ：もう長くないから というのが、口癖になった。 しかし、不思議と悲壮感は無い。 物がなくなっても、 ：そのうち出てくるよ。 と、楽…

姉の昨年の研究テーマは、 相対性理論を理解することだった。 年末、親族が集まった忘年会の席で、 お酒が入って、熱く語りだした姉を 皆、遠巻きに眺めていて、 飲めない私ひとりが、相槌を打っていた。 一応、姉なりに理解したらしく、 今回もまた、きちん…

年賀状は、正月に書くと言っていたが、 実は、思い直して、 暮のうちに年賀状を書いた母である。 しかし、控えを残していなかったので、 誰に書いたのか、書かなかったのか、 どうもはっきり記憶していない。 正月になって、年賀状が届くと、 果たして出した…

書き始めはするが、なかなか続かない母の家計簿。 新年で、帳面を新しく買い、 気分も新たに、書き始めたようだが、 ３週間も経たないうちに、 ：面倒くさくなった。 と、言い出した。 毎日の買い物をメモするだけで、 相変わらず、収支もつけない、いい加減…

５年日記を買うと言っていた母だったが、 買ってきた日記帳を見てみたら、 少し大きめサイズの手帳だった。 ：日記帳ありますかって聞いたら、これですって勧められたのよ。 と、母はすました顔で言った。 これは日記帳ではなくて手帳だよと言うと、 ：どお…

最近の母は、 ：何もする気がしない。 と言って、 手間のかかる料理などは、しなくなり、 毎年作っていたおせち料理も、 今年は、材料を買うこともしなかった。 きんとんのサツマイモだけは、 買っていたようだが、 それも、２５日過ぎに、煮付けて食べてし…

母が、 ：もう１０年も生きないから５年にする。 と言って、 １０年日記を書き終えて５年日記を買うようになってから、 早くも１０年が経過する。 最初に１０年日記をプレゼントしたのは私で、 贈った相手は父だった。 父が、日記を書かないので、 それなら…

母と散歩に出かけた。 寒い季節になってきたので、 早朝の散歩をやめた母に付き添って、 昼過ぎの散歩に行った。 散歩コースは、 早朝と同じ、家の前の道を突き当りまで歩いて戻る予定だったが、 朝とは日差しの向きが違っていて、 日陰ばかりで寒いというの…

母の家で、長い間使っていた黒電話を使わないことにした。 先日、俺俺詐欺に会いそうになって以来、 心配した姉が、携帯電話だけにするようにと勧めたのだ。 母は、携帯電話で電話をかける練習をして、 なんとか新しい環境にも対応できたが、 問題は、伯母の…