正直者
父が生きていた頃は、
毎年、誕生日には、父がお小遣いをくれた。
きちんと熨斗袋に入れて、
表には墨で名前も書かれていた。
父から最後に貰った熨斗袋は、
今も保管している。
父が亡くなってからは、母が代わりに、
:これは、お父さんからよ。
と言って、同じように熨斗袋をくれるようになった。
それが途切れたのは、
昨年秋の姉の誕生日からだったが、
先日、私の誕生日に、母が、
:はい、お小遣い。
と言って、お札をくれた。
ありがとうと受け取って、
一緒に御飯を食べて、しばらくすると、
母が、また、
:誕生日のお小遣い、まだあげてなかったわね。
と言って、またお札をくれようとしたので、
さっきもらったと言うと、
:黙ってればわからないのに、あんたは正直だねえ。
と言った。
ボケているのか、試されているのか、
その時は、半信半疑だった。
数時間後、
;はい、お誕生日おめでとう。
と、また、お金をよこすので、
これで三度目だというと、母は、
:黙ってもらっておけば解らないのに、
本当に正直者だねえ。
と言って、笑った。
本当に忘れっぽくなったらしかった。
毎年、誕生日には、父がお小遣いをくれた。
きちんと熨斗袋に入れて、
表には墨で名前も書かれていた。
父から最後に貰った熨斗袋は、
今も保管している。
父が亡くなってからは、母が代わりに、
:これは、お父さんからよ。
と言って、同じように熨斗袋をくれるようになった。
それが途切れたのは、
昨年秋の姉の誕生日からだったが、
先日、私の誕生日に、母が、
:はい、お小遣い。
と言って、お札をくれた。
ありがとうと受け取って、
一緒に御飯を食べて、しばらくすると、
母が、また、
:誕生日のお小遣い、まだあげてなかったわね。
と言って、またお札をくれようとしたので、
さっきもらったと言うと、
:黙ってればわからないのに、あんたは正直だねえ。
と言った。
ボケているのか、試されているのか、
その時は、半信半疑だった。
数時間後、
;はい、お誕生日おめでとう。
と、また、お金をよこすので、
これで三度目だというと、母は、
:黙ってもらっておけば解らないのに、
本当に正直者だねえ。
と言って、笑った。
本当に忘れっぽくなったらしかった。