生涯学習

姉の昨年の研究テーマは、
相対性理論を理解することだった。
年末、親族が集まった忘年会の席で、
お酒が入って、熱く語りだした姉を
皆、遠巻きに眺めていて、
飲めない私ひとりが、相槌を打っていた。
一応、姉なりに理解したらしく、
今回もまた、きちんとレポートに纏めていた。
一部を見せてもらったが、
私の凡庸な頭では理解不能だった。

元々は、原子力発電について調べていたのが、
物理学に興味が移り、
物理学研究の歴史が面白くなり、
関連書籍を読み漁っていたらしい。

　：残念なのは、理解する端から忘れてしまうことなのよね。

姉が、詳細なレポートを書くのは、
一度理解したことを思い出せるようにするためだそうだ。
忘れてしまっても、読めば思い出せるように、
要点が纏められている。

子供たちが自立し、孫の子守りも一段落して、
毎日、好きな研究に没頭できる今が、
一番充実していると、姉は言う。

纏め上げたレポートを見ながら、
いつか孫に教えてあげたいと姉は言うが、
残念なことに、
今のところ、どの孫も全く興味を示していない。