お正月
元日は、親戚一同が母の家に集まった。
母が豆を煮なかった初めてのお正月だった。
姉の作ったお煮しめと既製品のきんとんや田作りが並んだ。
年賀状は五枚でいいと言っていた母だが、
元日から十数枚の返事を出す羽目になって、
姉に促されながら、渋々と返事を書いていた。
1枚書くごとに文句を言っている様子は、小学生のようだが、
相変わらずの達筆であった。
宴会が始まると、早々に部屋に入って寝てしまったので、
翌日、改めて母を訪ねた。
退屈だというので、
TV欄で寄席中継をやっているのを見つけて、母と一緒に見た。
知らない芸人ばかりだと言っていた母だが、
小朝が落語を始めると、熱心に見始めた。
だが、しばらくしてこっちを振り返って、
:だめ、話についていけない。
と、言った。
矢継ぎ早に話すので、理解が追いつかないのだ。
母は、笑っていたが寂しそうだった。
小朝が引っ込んで、ケーシー高峰が出てきた。
82歳だという。
ゆっくりと、かんで含めるような話に、母も、
:これなら解るわ。
と、笑顔が戻ってきた。
帰りの時間になって、母が明日は来ないのかと聞くので、
明日は、姉が来るからと伝えると、
:あの子はすぐに帰っちゃうんだもの。
と言った。
数ヶ月前から、帰りの時間を2時間ほど遅くして、
母が夕食を食べ終わるまで一緒に過ごすようにしている。
父が亡くなってからは、気ままな1人暮らしを選んだ母だが、
近頃は、出来ないことも多くなって、
姉も孫夫婦もボタンひとつで駆けつけて来られる体制をとっている。
だが、先日、そのボタンを指差して、
:これは、何のボタン?
と言い出して、姉を慌てさせている。
母が豆を煮なかった初めてのお正月だった。
姉の作ったお煮しめと既製品のきんとんや田作りが並んだ。
年賀状は五枚でいいと言っていた母だが、
元日から十数枚の返事を出す羽目になって、
姉に促されながら、渋々と返事を書いていた。
1枚書くごとに文句を言っている様子は、小学生のようだが、
相変わらずの達筆であった。
宴会が始まると、早々に部屋に入って寝てしまったので、
翌日、改めて母を訪ねた。
退屈だというので、
TV欄で寄席中継をやっているのを見つけて、母と一緒に見た。
知らない芸人ばかりだと言っていた母だが、
小朝が落語を始めると、熱心に見始めた。
だが、しばらくしてこっちを振り返って、
:だめ、話についていけない。
と、言った。
矢継ぎ早に話すので、理解が追いつかないのだ。
母は、笑っていたが寂しそうだった。
小朝が引っ込んで、ケーシー高峰が出てきた。
82歳だという。
ゆっくりと、かんで含めるような話に、母も、
:これなら解るわ。
と、笑顔が戻ってきた。
帰りの時間になって、母が明日は来ないのかと聞くので、
明日は、姉が来るからと伝えると、
:あの子はすぐに帰っちゃうんだもの。
と言った。
数ヶ月前から、帰りの時間を2時間ほど遅くして、
母が夕食を食べ終わるまで一緒に過ごすようにしている。
父が亡くなってからは、気ままな1人暮らしを選んだ母だが、
近頃は、出来ないことも多くなって、
姉も孫夫婦もボタンひとつで駆けつけて来られる体制をとっている。
だが、先日、そのボタンを指差して、
:これは、何のボタン?
と言い出して、姉を慌てさせている。