心配事

私は、週２回、母の所で食事の世話をしているが、
訪問する時は、息子を一緒に連れて行く。
買い物の荷物運びや、ちょっとした片付けなど気軽に頼めるし、
息子の方もいつもより上等な刺身や肉が食べられるので、喜んでついてくる。

しかし、このところ、
私が行かない日にも一人で出かけて行っては、
母の所に顔を出しているようなので、
小遣いでも貰いに行っているのではないかと訊いてみると、
初めは、言いたがらなかったが、しつこく聞いたら、

　：心配なんだよ。

と、ぶっきらぼうに言った。

それを聞いて、思い出した。
実は、２月に、母は一度具合が悪くなった。
私と息子が母と一緒に食事をしている時に、
突然、気絶したように動かなくなってしまって、
椅子から落ちないように息子に母を支えてもらいながら、
姉に電話したことがあったのだ。

数分で母は意識を取り戻し、
数時間後には、何もなかったかのように元気になった。
その後は、病院の検査でも異常は見つからず、
私もすっかりそのことは忘れていた。

しかし、息子はそのことを覚えていて、
もし、また、あの時のようになって、
誰もいなくて椅子から転げ落ちていたら、
と、心配して様子を見に行っているらしい。

亡くなった夫も心配性だった。
戸締りを何度も確認し過ぎて、ドアのノブを折ったことがあるくらいだ。
息子の心配性は夫譲りであろう。

幸い、母は元気で、具合が悪くなったのもそれ１回きりである。