留守番電話

先日、帰宅すると、留守番電話のランプが点滅していた。
再生ボタンを押すと、
５件の伝言があるとアナウンスがあった。

すべて、母からだった。

全部を再生してみると、
どうやら、母は、留守番電話だとは気付かずに、
アナウンスのテープと会話しているようだった。
録音の秒数が限られているので、
途中で切れては、また、電話してきたようだ。
最後の電話で、

　：電話があったってこと、あなたがちゃんと伝えておいてね。

というアナウンステープへのお願いで終わっていた。

後日、母に、尋ねると、

　：あなたの家に電話したら、知らない人が出て途中で切れた。

と、言っていた。
もう、何年も同じテープを使っていて、
少し前までは、母も、普通に伝言を吹き込んでいたのだが。

このところ、急速に、出来ない事が増えてきた母である。
得意だった煮豆も、
盛大に焦がしたり、味付けを忘れたりして、
私が仕上げをすることが多くなってきた。
まだまだ母の味に追いつくことが出来ない。
ちゃんと習っておけよと言った亡夫の言葉が身に沁みる日々である。