それぞれのバレンタイン

父が亡くなってからも、
生前と同じように、朝に晩に、
仏壇の写真に語りかける母は、
バレンタインデーに限らず、
常に父の好きなものを仏壇に欠かさない。
普段は、ミーハーの母だが、
バレンタイン商法には乗せられないらしい。

姉は、先週、
カタログで大きなチョコレートを
二箱も取り寄せていたので、
旦那さんに贈るのかと思っていたら、
二つとも自分用だと言っていた。
年に一度、自分への労いに、
普段は買わない高級チョコレートを買うのだそうだ。
自分用は買うが、
人にあげたことは一度も無いと、
きっぱりと言う。

一方、毎年、夫にチョコレートを贈っていた私は、
今年もチョコレートを買ってきて遺影の前に供えた。
供えた後は、息子と二人で食べようと思っている。