母の日記・使いこなしてる？

母は、家を尋ねてきた人に、新之助を見せて自慢する。
その日も、父の仏壇に線香をあげに訪れた近所の人に

　：私が一人で寂しくないようにって、娘が買ってくれたんですよ。

と話しながら、DSの中の、新之助を見せていた。
見せられたおじさんは、

　：ほーう、今は、こんなものがあるんですねえ。

と、感心しながら、母のDSを手に取った。
母の、説明を聞きながら、ＤＳをさわっていたおじさんの手が
POWERボタンにふれた。
画面が真っ暗になった。

　：こ、これは、たいへんなことを・・・。

おじさんは、慌てた。
しかし、この時、母の脳裏をよぎったのは、

　：（ここで取り乱しては、この機械を使いこなしていないと思われる。）

ということだった。
母は、にっこり笑ってDSを受け取ると、
DSのスイッチを入れ、ふたたび新之助を画面に呼び出した。

　：よかった、よかった。

壊したかと思って青くなっていたおじさんは、素直に喜んだ。
母も、面目が保ててほっとしていた。


この事件で自信を付けた母は、夜は、セーブしてDSの電源を切るようになった。

　：真っ暗にしてあげた方が、新之助もぐっすり眠れると思うのよ。

飼い始めてからこの日まで、ずっと電源を入れっぱなしにしていた母であった。