母の日記・飼い主の顔

母が、週末にかけて旅行に行くことになった。
亡くなった父の墓参りである。
母は、例によって新之助を連れて行くというので、
すれ違い通信をする時のための
飼い主の情報をきちんと編集しておこう
ということになった。

　：通信なんてしないかもしれないけどね。

母は、そう言いながらも
満更でもなさそうである。

まず、飼い主の顔を決めようと、
母に８種類の”顔”を見せた。
４つは男性用なので、当然選択肢から外れる。
後の４つの女性用は左から順に、

　　幼い女の子
　　女学生
　　大人の女性
　　年取った女性

が、デザインされているようである。
案の定、母は、

　：この、一番右の絵は失礼だと思わない？

と、言い出した。
顔にシワが描かれている年取った女性の顔のことである。
じゃあ私のと同じにするかと、その隣にある
大人の女性の顔を指差すと、母は、

　：そうね、それしかないわね。

と、にっこり笑った。

数ヶ月前、宇多田ヒカルの愛犬とすれ違った時、
飼い主情報の顔が私の使っているものと同じなのを見て、
何だか申し訳ない気分にさせられたものだが、
今回、母が同じ顔を選んだことで、
だいぶ気分が軽くなった気がする。