おばあちゃんのnintendogs日記

ヤフーブログから引っ越してきました。

父の入院

父が倒れたのは、初夏の朝だった。

前日まで旅行していて、
久しぶりに家に帰り、盆栽に朝の水やりを済ませて、
一服しようと腰を下ろして煙草に火をつけたところで、
心臓発作に見舞われたのだ。

母は、人工呼吸を試みたが、すぐに諦め、
救急車を呼び、近所に住む娘に連絡した。
幸い、救急隊の到着が早く、父は一命をとりとめた。

半月ほどで、父は、

「早く退院したい」

と、文句が言えるくらい元気になった。
このまま、検査入院させてほしいという母と、
別の病院に転院してほしいという病院が話し合っているうち、
二度目の発作が父を襲い、
その処置の過程で院内感染してしまった。

結局、その院内感染に肺炎を併発し、
半年後、父は亡くなった。77歳だった。

夏の終わり、病床の父が母に、

「もういいだろう」

と、言った。
食事もとれなくなり、
治療が辛かったのだろう。
母は、

「お誕生日まで頑張って」

と、頼んだ。
父は、返事をしなかったらしいが、
その冬の自分の誕生日の朝、
家族に看取られながら静かに息を引き取った。

「誕生日に死んだ人は人生にやり残したことが無い人なのよ」

と、母は言ったが、
父は、母との約束を守っただけなのだと思う。