アジサイの花

今年もアジサイの咲く季節になったので、
姉が母の家の玄関先に鉢植えを並べた。

　：真っ白の方が人気があるみたいだよ。

と、姉が言うので、何故わかるのかと尋ねたら、
白いアジサイは、咲くと一晩のうちに全部摘まれてしまうからだそうだ。
その後も、花が咲くたびに取られてしまい、
玄関先には紫の花ばかりが残っている。

姉曰く、
来年の花芽を残して摘んでいく分には仕方ないとあきらめるのだが、
花芽を残さずにむしり取るように持って行かれると、
次に咲かせるまで２年かかってしまうので困るのだそうだ。

アジサイが取られるのは、今年に始まった事ではないので、
玄関先に並べる時点で、織り込み済みらしい。
それでも、きれいに咲いているところを見てほしいと、
１年間丹精込めて育てたものを並べている。

中には、挿し木にしたいから下さいと、ことわって切っていく人もいる。
どうぞどうぞと、先日も快諾したら、
１本残さず切っていかれて思わずのけぞったと姉は笑う。

以前は、よく鉢ごと盗まれたので、
鉢をみすぼらしくしたら、最近は花だけ切っていくようになったそうだ。

盗んだ花を飾って、心が癒されるのだろうかと姉に問うてみたら、

　：そういう人の庭には色々な所から盗んだ鉢がいっぱい並んでいて、
　　これはどこから持ってきたとか、あれはどこそこにあったとか、
　　言い合って楽しんでるのかもね。

と、笑っていた。