伯母の庭

最近は、昼間でも眠い眠いと言って、散歩に誘ってもなかなか出たがらない母だが、
暖かくなってきたし、桜も満開になったので、久しぶりに散歩に連れ出した。

裏の方に昔よく遊んだ野原があって、そこが今は梅園になっていて、
ちょうど梅も満開だった。
その先は、古くからの住宅街で庭にりっぱな桜の木がある家がいくつかある。
どの木も古木になっていたが、よく手入れされていて、
綺麗な花を咲かせていた。

　：久しぶりにお姉さんの家に行ってみよう。

と、母は言って、
伯母の家があった場所へ向かった。
伯母が亡くなって一年。
子どもが無く、家を継ぐ人もいなかったので、
家があった場所は、すっかり更地になっている。
数ヶ月前に来た時と同じようだった。

近所には、やはり古くからあった家を壊して、区画整理をして、
小さな家を４軒くらい建てて売りに出している所があった。
伯母の所も、いずれは、そうやって小分けにして売られるのだろう。

　：広いねえ。百坪以上あるからねえ。

更地を見ながら、母が言った。
私も、小さい頃は、よくその庭で遊んだ。
池に鯉が泳いでいたり、裏庭に鳥小屋があって、
伯父さんが餌をあげていたのを思い出す。

伯父さんが倒れてからは、生き物を飼うのは止めてしまったけれど、
秋には柿の木にたくさん実がなって収穫を手伝ったこともあった。

今は、すっかり跡形も無い。
そのことを悲しむでもなく、ただただ、懐かしく思うばかりである。