ナンテンの花

母の家の庭の隅にあったナンテンの木。
間違って切ってしまった後、
姉に不運が続いたので、
母は、新しいナンテンを探しに行った。

その頃は、春先でちょうど店にも並んでいなくて、
あちこち探し回っているうちに、
思いのほか遠くまで来てしまった。
疲れて裏通りの民家の軒先を借りて休んでいたら、
その家の住人に声をかけられた。
母は、こういうわけでナンテンを探していると話すと、
そういう事情なら、家にあるのをわけてあげるよと、
軒下にあった鉢植えのナンテンを引っこ抜いて袋に入れてくれた。
母は、申し訳ないと一度は辞退したのだが、
大丈夫だから持って行ってと言われ、
お礼を言って、そのナンテンを持ち帰り、
姉に頼んで庭の隅の同じ場所に植えてもらった。

先日、思い出して、
あのナンテンは、どうなったかと尋ねたら、

　：花が咲いたのよ。

と、嬉しそうに言う母。
譲ってくれた人にお礼を言いに行きたいのだが、
歩き回って道に迷って辿り着いた所だったので、
行き方がわからないのだそうだ。

その後、姉の時計は無事修理され、
家の追加工事も無事に終わった。
母には、新しい曾孫も生まれた。
快くナンテンを譲ってくださった方に感謝している。