おばあちゃんのnintendogs日記

ヤフーブログから引っ越してきました。

父との思い出

毎朝、仏壇に向かって御題目を唱えるのは、
父が亡くなってから母がずっと続けている日課である。
お経をを読むのではなく、
父の戒名をひたすら繰り返すのが、母の流儀である。
ぶつぶつと唱えながら、
ひと時、父との思い出に浸るのだという。

その日思い出したのは、
父と母が結婚して1年目の年末、
父の一年分の稼ぎを貯金しようと、
銀行に向かう途中、
そのお金を落として失くしてしまった母。
どんなに叱られるだろうかとびくびくしながら、
父の帰宅を待っていた。
待つうちに、だんだんと開き直って、
謝ってもねちねちと怒るような人なら
離縁しようと心に決めたそうだ。
帰宅した父は、
失くしてしまった物は仕方ないと、
母を一言も咎めなかったという。

:この人と結婚して本当に良かったと思ったわ。

この話をする度、こう言って娘にのろけるのだが、
この朝は、
優しかった父を思い出して、
久しぶりにさめざめと涙を流した母であった。