母の日記・おて！ ふたたび

新之助が　ふせ　を覚えた。

母は、早速覚えた　ふせ　を私に披露しながら、

　：ちんちん　も訓練中なのよ。

と、得意げである。
こういう時は、一人暮らしの母が羨ましくなる。
発売から３ヶ月経った今でも、家族のいる前で
画面の中の子犬に、声を出して呼びかけることには
一種気後れを感じる私である。
うちの３匹の子犬たちは、未だに　ちんちん　を覚えていない。

母が、歌舞伎のDVDを見なくなったと以前書いたが、
テレビの音が新之助の躾に邪魔だったというのが
どうやら一番の理由だったようだ。

　：もう一つ、　立とうかな？　というのも
　　練習中なの。

私に、そう報告する母だが、
実は　おて　だけは、教えられずにいる。
タッチペンで　おて　をさせてトレーニングボタンを押すまでは
順調に進むのだが、母が　おて！　と言おうとすると
画面の中の新之助が前足を下ろしてしまうので、

　：ああ！またダメじゃない！

と、言ってしまうのだ。
画面の中では、　ああ！またダメじゃない！　という母の声が録音され
再生されて、新之助が　わかった！　と言わんばかりに

　　ワン！

と、吠える。
芸の名前を言う時に前足を下ろしていても大丈夫なのだと、
母には何度も教えているのだが、このままでいくと新之助は

　　ああ、まただめじゃない

と言うと　おて　をする変わった子犬になりそうである。