母の日記・海老蔵よりも新之助？

新之助を飼い始める前、母は毎日、歌舞伎のDVDを流していた。
見ていなくても、いつも付けっぱなしだったから、
母の家に行くと、決まって、居間のテレビから鼓や太鼓の音が流れていた。
市川海老蔵の舞台中継を孫に録画してもらったものだ。
海老蔵が、まだ新之助だったころ、
テレビを見てファンになり、一度だけ歌舞伎の公演を見にいった。
父が亡くなった後は、DVDを見ることで、
その寂しさを紛らわせていたのだろう。
子犬の名前を付ける時も、母は、迷わず　新之助　に決めた。


新之助を飼うようになってから、
母の家に行っても、居間のテレビがつけっぱなしになっている事はなくなった。
その代わりに、テレビの前の小さなテーブルの上に
子犬の新之助が暮らすピュアホワイトのDSが、ちょこんと置かれている。

　：毎日餌やって
　　１日に３回お散歩させて
　　ゆっくり歌舞伎見てる暇もないわよ！

そうこぼす母だが、
言葉とは裏腹に、とても楽しそうである。