筆談

母と話をしていて、なかなか伝わらない単語があったので、
持っていたメモ帳に書いた。

書いた文字が小さかったのか、
一度では読めずに、メモ帳をはさんでしばらくやり取りした後、
また、使うこともあるかもしれないと、そのまま置いておいた。

用事をしに行って戻ってきた母が、メモ帳を見つけて、

　：これはなあに？

と、訊いた。
先程の筆談のことを説明したら、
ケラケラ笑っていたが、
数分もしないうちに、また、

　：これはなあに？

と、訊いてきた。

母は、すっかり忘れっぽくなった。

先日は、親戚から新茶が送られてきたのだが、
ちょうど母も自分で取り寄せの新茶を注文したところで、
同時に配達されたので、混ざってしまって、気が付かなかった。
まだ届いていないのかと親戚から指摘されて、
ようやく、届いていたことに気が付いた。

母と一緒に、そのお返しを送りに行った。
それが届いたという連絡は、
母にではなく、ちょっと離れて暮らしている姉の所に電話があった。
別の親戚にも送った分は、
後日、封書でお礼状が届いた。
送ったことを忘れていた母は、何事かと訝っていたが、
説明したら、

　：すっかり耄碌したねえ。

と言って笑っていた。