ひな祭り

母の家で久しぶりに雛人形を飾った。
姉が生まれた翌年に祖母が買った人形なので、
６０年以上前のものだ。
姉の成長に合わせて、毎年１段ずつ祖母が買い足して、
５段飾りが完成した時に、
知り合いの大工さんが専用の段飾りの骨組みを作ってくれた。
組み立て式で、パズルのように、
パーツごとにアルファベットの記号が書いてあって、
順番に組んでいくと、骨組みが完成する仕組みであった。
しかし、そのパズルが難解で、
毎年ああでもない、こうでもないと、
子供たちの頭を悩ませた。

私が小さかった頃、
ちょうどひな祭りの時期に、
隣家が火事になり、
類焼を恐れた母が、家財を運び出す折に、
飾っていた人形も、がらがらと運び出した。
結果、上の２段は無事だったが、
他の人形と細かい冠や扇などは、失われてしまった。

だから、現在も、母の家のお雛様は、
子供たちの手作りの扇や杓子を持っている。
３段目から下は、火事の後で買い換えたので、
１０年分ぐらい新しい。
数年前、置く場所が無いからと、
専用の骨組みを処分してしまったので、
今年は、テーブルの上に全部の人形を並べて飾った。

数年ぶりに箱から出されたお雛様に、母は、

　：やっぱり、うちのお雛様の顔は良い顔してるね。

と、嬉しそうであった。