新しい靴
母が靴を買った。
これまで履いていたのが、靴底が擦り切れて滑りやすくなったので、
もうひとつ同じような履き心地のを買ってきたらしい。
だが、履き心地が気に入らなかったのか、
すぐにまた、もう一足買って来た。
玄関に三足の靴を並べ、
どれが新しい靴なのかわからなくなってしまったらしく、
結局、また、一番古いのを履いたりしている。
ひっくり返して靴底を確かめれば、すぐにわかるのだが、
そうした機転がだんだん利かなくなっている最近の母である。
:三足もあっても困るから、一足もらってくれない?
と、母が言うので、
母が一番履きにくそうにしていた靴を引き取ることにした。
私の今履いている靴も大分くたびれているので、
母も役に立って嬉しいと喜んでいた。
それ以来、母の家を訪れる度に、母に、
:あの靴を履いてこなかったの?
と、訊かれる。
自分の履き心地で選んだわけではないから、
つま先が少し当たるので、履いていないのだが、
最近は、忘れっぽくなった母が、何故か、
靴のことだけは、いつまでもはっきりと覚えていて、
この靴が完全に壊れたら履くねと、
いつも、同じ言い訳をさせられている。
これまで履いていたのが、靴底が擦り切れて滑りやすくなったので、
もうひとつ同じような履き心地のを買ってきたらしい。
だが、履き心地が気に入らなかったのか、
すぐにまた、もう一足買って来た。
玄関に三足の靴を並べ、
どれが新しい靴なのかわからなくなってしまったらしく、
結局、また、一番古いのを履いたりしている。
ひっくり返して靴底を確かめれば、すぐにわかるのだが、
そうした機転がだんだん利かなくなっている最近の母である。
:三足もあっても困るから、一足もらってくれない?
と、母が言うので、
母が一番履きにくそうにしていた靴を引き取ることにした。
私の今履いている靴も大分くたびれているので、
母も役に立って嬉しいと喜んでいた。
それ以来、母の家を訪れる度に、母に、
:あの靴を履いてこなかったの?
と、訊かれる。
自分の履き心地で選んだわけではないから、
つま先が少し当たるので、履いていないのだが、
最近は、忘れっぽくなった母が、何故か、
靴のことだけは、いつまでもはっきりと覚えていて、
この靴が完全に壊れたら履くねと、
いつも、同じ言い訳をさせられている。