抱擁

２年前、夫の突然の死から二日間、
様々な対応に走り回った後、
全部を一人で引き受けて頑張らなくてはと
肩肘張っていた自分を
暖かく包んでくれたのは、
母の抱擁だった。

　：辛かったね。
　　みんなで支えるから安心して。

母の言葉に救われた思いがして、
こらえていた涙が溢れた。


あの地震の瞬間は、母と過ごしていた。
母の柱時計が大きくひとつ鐘を打って、
斜めに傾いて止まった。
用心深い父が万全の対策を施していた家は、
父の仏壇の中の物が倒れた以外は、被害がなかった。
そこまでしなくても、と言っていた姉の家は、
落下物で足の踏み場が無くなるほどだった。
訪問介護を受けている伯母の所へは、
親戚が駆けつけるより早く、
介護の方が駆けつけてくれ、ありがたかった。


今、たくさんの悲しいニュースが流れる中、
二年前、母に貰った言葉を送りたい。

　みんなで支えるから安心して

と。