母の日記・楽引辞典

今から十数年前、私は母に電子辞書を贈ったことがある。

　：最近字引の字が細かくて読みづらくなった。

と、母が言ったのがきっかけだった。
当時、２万円近くしたその電子辞書は、
ひらがなをキーボードで入力すると
白黒の液晶画面に大きめの漢字が表示されるだけの
単純なものだったが、
母は、大変気に入って、愛用してくれた。
だから、今回贈った「楽引辞典」も
程なく使いこなしてくれると思う。

　：使い方を教えてよ。

と母に促されて、母のＤＳを起動した。
私がタッチパネルを使わずに
Ａボタンを押してソフトを起動したのを
目ざとく見つけた母が、

　：今度のは、やり方が違うの？

と聞いたので、
私は、起動画面をタッチしてくださいという時には、
Ａボタンで代用できるということから
説明しなければならなかった。