母の日記・デジタル化の波紋

母の所へ、ケーブルテレビ会社の係員が、
新しく導入されるデジタル回線の説明にやってきた。
説明を聞いても、ちんぷんかんぷんで解らない母は、
係員の話の腰を折っては、説明を長引かせていた。

　：ケーブルテレビって面白い番組やってないじゃない。
　　私は、海老蔵が好きなのにあんまりやっていないから、
　　代わりに犬を飼って、新之助って言う名前を付けたのよ。

こじつけのように、新之助の話題に持って行く母。
係の人も、ちょっと興味があったらしく話に乗ってきた。

　：僕、これ見るの初めてなんですよ。可愛いですね。

母は、得意になって、新之助のシャンプーを
やって見せながら、

　：いつもなら「おすわり」や「ちんちん」も出来るんだけど、
　　今日は、私が風邪気味で声が変わっちゃってて駄目なのよ。

と、言い訳した。
本当は、もうだいぶ治っているのだが、
言うことを聞かないと恥ずかしいので
そう言ったのだそうだ。
２時半に来た、その係員が、説明を終えて帰っていったのは、
４時を回ってからだった。
母は、

　：うちの次にあと何軒回ることになっていたのかねえ。

と、人ごとのように言いながら笑っていた。