母の日記・昔話
風邪気味の母は、新之助の世話も滞りがちである。
そんな時は、ゆっくりと昔話をしながら過ごす。
先日は、母の父、即ち私の祖父の話をして懐かしんだ。
戦争中の話。
毎日のように空襲があった頃。
その日、祖父は、空襲警報が鳴ると、
いつものように
:空襲に備えて腹ごしらえだ!
と言って、茶筒に入れて置いてある
炒り豆をぼりぼりと食べ始めた。
祖母にお茶を入れさせ、
流し込むように1人で豆を食べた。
結局、空襲は来ず、警報は解除になったが、
祖父は炒り豆とお茶で腹が膨れてしまった。
ふやけた豆が食道に詰まり、青くなって苦しんでいる祖父を
皆で布団に寝かせ、枕元に線香を立てた。
そうして、母と母の姉が、
:明日はきっとお通夜だね。
:お通夜になったら三日間は針仕事が出来ないから
縫い物があったら今のうちにやっておきなよ。
などと、余計な心配をしながらも、時折、
:おとうさ~ん!死んじゃ嫌だ~!
と、枕元で叫んでいた。
:俺の人生は一夜の夢のごとし・・・
などと、遺言めいたことを言い出した祖父を
:ちょっと、起きてみたら?
と、祖母が布団の上に座らせた。
その拍子に詰まっていた豆が口から飛び出し、
祖父は、一命を取り留めたのだった。
平和になった今も、母は戦争中の体験をよく語る。
辛い体験なのだが、母が語ると
どの話も、何処かユーモラスである。
そんな時は、ゆっくりと昔話をしながら過ごす。
先日は、母の父、即ち私の祖父の話をして懐かしんだ。
戦争中の話。
毎日のように空襲があった頃。
その日、祖父は、空襲警報が鳴ると、
いつものように
:空襲に備えて腹ごしらえだ!
と言って、茶筒に入れて置いてある
炒り豆をぼりぼりと食べ始めた。
祖母にお茶を入れさせ、
流し込むように1人で豆を食べた。
結局、空襲は来ず、警報は解除になったが、
祖父は炒り豆とお茶で腹が膨れてしまった。
ふやけた豆が食道に詰まり、青くなって苦しんでいる祖父を
皆で布団に寝かせ、枕元に線香を立てた。
そうして、母と母の姉が、
:明日はきっとお通夜だね。
:お通夜になったら三日間は針仕事が出来ないから
縫い物があったら今のうちにやっておきなよ。
などと、余計な心配をしながらも、時折、
:おとうさ~ん!死んじゃ嫌だ~!
と、枕元で叫んでいた。
:俺の人生は一夜の夢のごとし・・・
などと、遺言めいたことを言い出した祖父を
:ちょっと、起きてみたら?
と、祖母が布団の上に座らせた。
その拍子に詰まっていた豆が口から飛び出し、
祖父は、一命を取り留めたのだった。
平和になった今も、母は戦争中の体験をよく語る。
辛い体験なのだが、母が語ると
どの話も、何処かユーモラスである。