母の日記・お月様

すっかり秋らしくなってきた。
nintendogsの和室では、もう蝉の声も、蛙の声も聞こえない。
虫の声でもしないかと、聞き耳を立ててみたが、
聞こえたのは、水の流れる音だけだった。
代わりに、家の窓の外から、コオロギの声がした。

月の綺麗な季節になると、思い出す話がある。
父と母がまだ結婚する前の話だ。
ある月の綺麗な晩に、父が母にこう言った。

　：君は、お月様のようだね。

聞いた母は、とても嬉しかったそうだ。
結婚後、母は、その時の事を父に聞いてみた。

　：どうしてそう思ったの？

父は、すかさず答えた。

　：横顔が、花王石鹸の三日月のマークに似てるから。

母は、もの凄くガッカリしたと、
まだ子供だった私たちによく語っていた。
確かにそっくりだと、子供ながらに感心した記憶がある。
普段は冗談など言わなかった父の
隠された一面も垣間見れた気がした。